『超数学』講座
2024年わが校は、学校法人永守学園京都先端科学大学附属中学校高等学校として新たに出発して4年目となります。今年度も、国内外の教育機関と連携し、WWL校(「ワールド・ワイド・ラーニング・コンソーシアム構築支援事業」カリキュラム開発拠点校)として、建学の精神を体現する教育創造に邁進したいと思っております。
2024年度の学校方針のトップに掲げられたスローガンは、引き続き「京都発世界人財の育成~唯一無二の中高大一貫教育を目指して」です。そして、学校方針8項目のうち,「学びの向上」「学びの発信」「進路実現」を中心でになう教務部の重点目標には、これも昨年と同様に「STEAM教育の推進」が掲げられています。STEAM教育は、Science(科学)、 Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を統合的に学習する教育手法で、次の時代を創造する人間を育てることが目的です。また、副題に「ものづくり、デザイン思考、哲学対話、超数学、SGSなど」と、「超数学」を掲げています。STEAM教育の土台に数学が置かれていること、そして先端科学を支える基礎科学が数学であることを肝に銘じて、2024年度も魅力にあふれた数学教育を進めたいと思います。
超数学講座とは、学年の枠を超えて、数学の難しい問題にチャレンジしていく講座です。高校各学年で、数学科より推薦された、数学を得意とする生徒たちで構成されています。毎年この講座から難関国公立大学への合格者が続々と出てきました。また指導する教員も、生徒とともに、ただ一通りの解を示すだけでなく、様々な数学的な考え方や手法を用いて別解を考えるなど、数学を探究する場でもあります。
2024年度も「山脇の超数学」を継続します。興味深い数学の話題を提供し、数学の魅力をより多くの人々に伝えていきます。随時更新しますので、ご期待ください。
「科学と芸術」第65弾 (続)直交する接線の交点の軌跡(楕円) 2024年 10月
今回は前回の続編となっており,「(続)直交する接線の交点の軌跡(楕円)」としました。初めて見る人は,ぜひ前回の「山脇の超数学No.64 直交する接線の交点の軌跡(楕円)」をざっと読んでから今回を読むようにすると,より理解が深まると思います。
前半の別解2 (別証明2)は,楕円という図形そのものの定義=「2つの定点からの距離の和が一定である点の軌跡」と「楕円内の焦点から発せられた光は楕円で反射してもう一方の焦点に集まる」性質(*),そして三平方の定理,さらに「中線定理」(パップスの定理)を利用して,「直交する2接線の交点の軌跡は円である」ことを証明しています。まず座標平面を設定して,長軸2a,短軸2bとし,焦点の座標を定め,2つの焦点からの距離の和が2aとなるようにすると楕円が定まります。外部の点Pから楕円に2本の接線を引いたときの接点を定め,それぞれの接線に関して焦点と対称な点をとる……というように推論がなかなか複雑に思えますが,設定さえしっかりできれば,あとは(*)の性質が利用できて,三角形の合同で等しい角が決まり,接線の直交→三平方の定理→等しい辺の移動→中線定理 と進んでいけるのです。座標平面を使うと,最後に円の方程式が登場して結論に至りますが,平面図形の性質(平面幾何)だけでも証明が可能です。図形が好きな人向けの証明です。この証明は,教科書,参考書ではあまり採りあげられていません。たぶん前半の点の設定がやや複雑であるのと(*)の性質が一般には知られていないからでしょう。
後半の別解3(別証明3)は,三角関数を利用して接線の方程式を表現する方法です。円であれば接線と半径が垂直なので,三角関数を用いて簡単に接線が表現できますが,楕円ではそうはいきません。ここでは,前回の最初の証明で示した接線の方程式に,m = tan θ を代入して,三角関数で表現された接線の方程式を導いています。その接線に垂直である接線の方程式も「対称的な形」で導かれます。今回は,2接線の原点からの距離をそれぞれ求め,それらの2乗の和がOPの2乗に等しい(三平方の定理)と三角関数の重要な性質(これも三平方の定理がもと)を使って結論を導いています。
図形の研究は「幾何学」として数千年の長い歴史をもっているので,その性質の証明には多くの方法があることを示す例が,この楕円の性質に関係する証明なのです。
前回の証明と合わせた4つの証明を,2024年9月12日・13日の文化祭で展示しました。その際のアンケートでは,2番目の証明(別解1 円に拡大して円の性質を利用して証明)が最も多くの支持を集め,次に4番目の証明(別解3 三角関数からのアプローチ)が多くの支持を集めました。3番目の証明(別解 2 楕円の定義と性質から証明していく)は第3位でしたが,どの解法の証明も一定の票を集めました。図形の奥深さ,別解の興味深さがわかってもらえたと思っています。
山脇の超数学No65(続)直交する二接線の交点の軌跡(楕円)
「科学と芸術」第64弾 直交する接線の交点の軌跡(楕円) 2024年 9月
今回も図形がテーマですが,今回は「楕円」に関係する性質を紹介します。「楕円」に関しては,「山脇の超数学No.36」で初めて紹介しました。そのときは,「楕円内の焦点から発せられた光は楕円で反射してもう一方の焦点に集まる」という性質で,楕円の定義と「角の二等分線の定理の逆」を使って証明しました。「楕円」だけでなく,双曲線でも似た性質があり,そちらも証明していました。
今回紹介する楕円の性質は,楕円上の点で楕円に接する直線(接線)を2本引き,その2本が垂直で交わる(直交する)とき,その交点をたどっていくと円になる(交点の軌跡は円である)という,これまた美しい性質です。
教科書や参考書でも紹介されており,大学入試問題でも出題されたことがありますが,2つの接線の交点の座標が複雑な式になり,なかなか円になることを導くことが難しい問題となっています。
今回は,2つの接線の方程式から交点の座標を求めることなく,式変形によって傾きのmを消去して,軌跡である円の方程式を導く方法をまず紹介します。mを消去するところが鮮やかに決まっています。
もう一つは,楕円は円を一方向のみ拡大(あるいは縮小)した形であることを逆に利用し,楕円も接線も拡大して円と接線の関係に直してしまい,傾きmの方程式から軌跡である円の方程式を導く方法です。
両方とも交点の座標を求めずに進めていくところが特徴です。ぜひ味わってください。
さて,実は「楕円内の焦点から発せられた光は楕円で反射してもう一方の焦点に集まる」性質からも,「直交する2接線の交点の軌跡は円である」ことを証明できることがわかっています。その紹介は次の機会といたしましょう。
山脇の超数学No64 楕円で直交する二接線の交点の軌跡
「科学と芸術」第63弾 円に内接する四角形の二定理 2024年 8月
今回は,「円に内接する四角形」に関係する二つの定理(公式)を紹介します。
まず,後で紹介する「トレミーの定理」ですが,「数学A」教科書「図形の性質」の章で紹介されている定理です。「角の二等分線の定理」や「方べきの定理」などのように,単元があってワクで囲んである定理の扱いにはなっておらず,「章末問題扱い」になっている場合もありますが,「円に内接する四角形」においては重要な定理なのです。
トレミーとは,古代ローマ時代の数学者であり,天文学者でもあったクラウディオス・プトレマイオス(83頃~168頃)のことで,英語読みするとトレミー(Ptolemy)となります。天文学に利用するために正確な三角比の表(正弦sinのみ)を作成したことで有名で,三角比を詳しく求めるために「トレミーの定理」を利用したといわれています。「トレミーの定理」は,円に内接することから「三角形の相似を利用した証明」が有名ですが,ここでは三角比の中でも「余弦定理」を利用しています。後半の因数分解がカギを握ります。「正弦定理」を利用した証明もありますが,やや難しくなります。他に,面積を使う証明,複素数平面を使う証明などがあり,興味が尽きません。
もう一つは,今回は先に紹介している,円に内接する四角形の面積を求める「ブラーマグプタの公式」です。こちらは,「数学Ⅰ」教科書「図形と計量」の章で紹介されている「ヘロンの公式」の発展形です。「円に内接する四角形の向かい合う角(対角)の和は180°である」という性質をたくみに利用して,「余弦定理」で導いています。しかし,途中の式変形は,三角形の面積における「ヘロンの公式」のときの式変形とよく似ています。そして,「ヘロン」では「(三辺の長さの和)÷2=s 」としたところを,「ブラーマグプタ」では「(四辺の長さの和)÷2=s 」としています。ところが,振り返ってみると,「ブラーマグプタの公式」は「ヘロンの公式」を含んでしまっているのです。
ブラーマグプタ(598~665)は,インドの数学者で,天文学者でもあったところがトレミーと似ています。今回「ブラーマグプタ」を先に紹介したのは,証明の途中までをそっくりそのまま「トレミー」の証明に利用できたからです。
二つの定理(公式)には,「対称性」も含まれていて,利用価値も高く,高校教科書でもっと紹介されてよいと感じています。
山脇の超数学No63 円に内接する四角形の二定理
「科学と芸術」第62弾 2次関数の問題へのアプローチ 2024年 7月
今回は,「2次関数の問題へのアプローチ」としました。
2次関数については,「xの2乗に比例する関数」として,初歩的なものは中学3年で学習します。
高校1年の「数学Ⅰ」では,中学校で習った2次関数のグラフを平行移動することによって,一般的な2次関数のグラフを描きます。そのためには「平方完成」という式変形が有効であることを学び、「平方完成」ができるように練習します。中でも「2次関数の最大・最小」は中心的なテーマで,文字係数の2次関数で「軸が移動する場合」,定義域が変数で与えられ「定義域が移動する場合」などの最大・最小について学びます。2次方程式,2次不等式を2次関数と関連づけて学習することも重要です。総じて「2次関数」の分野は,「数学Ⅰ」の最も重要な分野で、高校数学の屋台骨といってもよいでしょう。
今回の問題は「2次方程式の解の存在範囲」という有名な問題で,類題が必ず教科書・問題集・参考書に掲載されています。この問題の解法は「グラフを利用する」もので,典型的な解法です。
ところが,今回は「アプローチ」を変えて,あえて「数学Ⅲ」の微分法を使った解を( 別解1 )としました。この解法で使われるのが,「aを左辺に分離し,右辺はxの関数の形にする」という「変数分離」という方法です。この方法ですと,「数学Ⅰ」の解法の [1]~[4]のように,「場合分け」をする必要がありません。また,「aの値の範囲」の意味がよくわかります。つまり,右辺の関数の最大値・最小値(最大値や最小値がない場合もあり,「yの値域」とする)
がわかれば,左辺の「aの値の範囲」も定まるのです。しかも,この解法はグラフの利用が効果的です。
「数学Ⅱ」では,「相加平均≧相乗平均」という有効な方法があり,正の数の場合にしか使えませんが,この問題では使えるようになっており,最小値が求められて,続いて「yの値域」も求められるので,「aの値の範囲」が決まります。( 別解2 )
「数学Ⅰ」を使った解法は,ていねいな「場合分け」がなされており,必ずできるようにしておきたい解法です。その上で,このように別解を探究していくことが数学のおもしろさなのです。
山脇の超数学No.62 2次関数の問題へのアプローチ
「科学と芸術」第61弾 tan(nθ)の魅力 2024年 6月
今回は,三角関数の中の 正接 tan θの「n倍角公式」がテーマです。三角関数は「山脇の超数学」の中心的なテーマの一つで,これまでたびたび登場しています。中でもtan θは,No.46で以下のように登場しています。
「今回はtan (θ/2) の役割について紹介します。すべての三角関数との相互関係を持つtan (θ/2) は、積分法や(三角)方程式で「ヘルパー」としての役割をもちます」その続きとして,No.47では以下のように紹介されます。「複素数を原点からの距離と回転角で表示する「極形式」によって、複素数の利用が格段に進むようになりました。その回転角を偏角といい,そこにtan (θ/2) が関係しているので、前回の「ヘルパーtan (θ/2)」の性格がより明らかになりました」No.55の「積分と漸化式」でも tan θ が活躍することが明らかにされました。
今回はtan ( nθ ) がtan θのどのような式で表されるのか を探究しました。
結果,求められた式には「虚数i 」が入ることになりました。しかし,気にすることはありません。n=1,2,3,4,…としていくと,ことごとく虚数i は消えて実数値としてのtan ( nθ ) が求められるのです。cos ( nθ ) もcos θの多項式で表されることは知られていますが,私はtan ( nθ ) の方がまとまった形をしていると思います。sin ( nθ ) はsin θだけの多項式では無理で,cos θの力を借りなければなりません。その点でもtan ( nθ ) は素晴らしいのです。tan ( nθ ) の公式が複素数平面の定理を使っても証明できるところは,No.47にもつながっていきそうです。今回だけでは,三角関数の「n倍角公式」の深遠さを表すことはできません。また次の機会で展開することにしたいと思います。
山脇の超数学No.61 tan(nθ) の魅力
「科学と芸術」第60弾 角度を求める問題 2024年 5月
今回は,第42回の「ラングレーの問題100周年」の続編で,「角度を求める問題」です。
平面図形の角度を取り上げるのは久しぶりです。単に角度を求めるだけの問題ですから,「補助線を引けばすぐに求められる」と思いますが,なかなかそうはいきません。その理由は,24°という角度がふだん「あまり登場しない角度」だからです。生徒の皆さんにこの問題を出題すると,ほぼ行き詰まってしまいます。この問題の手がかりになるのは,∠BAD=30° と AB=CD ,つまり線分の長さが等しいという点です。この2つの手がかりから,辺ABを1辺とする 正三角形ABE を作図します。
すると,∠DBE=∠DEB=36°となることに気づき,そこに正五角形をはめ込みます。それから二等辺三角形を次々と見出し,最後は角度の差をとって30°となるのです。二等辺三角形をつくっていく方法は「ラングレーの問題」の解法に似ていますが,最初の正五角形はなかなか思いつくものではありません。結果は30°とシンプルです。そこで,「ラングレーの問題」のときと同じように「三角関数の利用」を考えました。三角形にとって,三角比(関数)の存在は,「正弦定理」「余弦定理」「面積の定理」など,非常に強力な道具なのです。(解答2 )では,正弦定理と「加法定理」が活躍し,黄金比も登場しますが,最後は偶然,辺の比が簡単になることに気づき,30°に到達できるのです。「36°=黄金比が関係する」は,第19回「黄金比φとは?」以来です。黄金比そのものは第31回,第32回でも登場していましたが……。今回の問題では,BC:BAという辺の比が黄金比になっていたのです。そして,BA:BD も黄金比です。そうしたら,(解答3)のように△ABCと△DBAは「相似」になることが明らかで,x°=30°が一瞬で求められてしまうのです。相似比は黄金比でした。
角度を求める問題は,「考え出したら頭から離れない」魅力をもっています。今回の問題での出題者の意図はわかりませんが,「巧妙に設定された問題」だと思います。今後もこのような問題に出会ったら紹介していきます。
山脇の超数学No60 角度を求める問題から
「科学と芸術」第59弾 三角形の五心最後の砦=傍心の位置ベクトルに挑む 2024年 4月
今回は,前々回の「三角形の内心・垂心・外心の位置ベクトル」の続編で,「三角形の五心最後の砦=傍心の位置ベクトルに挑む」としました。
三角形の五心の中で,傍心だけはやや異色な存在です。なぜなら,他の4つの「心」
(重心,外心,内心,垂心)は1つずつしか存在しないのに,「傍心」は3つも存在するからです。その理由は,傍心は「1つの辺と残りの2辺を延長した直線に接する円の中心」だからです。この円を「傍接円」と呼びます。イメージしてもなかなかわからないときは,今回の図3を見てください。三角形の3辺とそれぞれ残りの辺の延長線と接するので3つあるわけです。三角形の各辺に「内接する」のが「内接円」で,その中心(内心)がIであるのに対し,三角形の各辺に「外接する」のが「傍接円」で,その中心がI1, I2, I3 で,これを「傍心」と呼ぶ,とすればわかりやすいかもしれません。
平面図形では「位置ベクトル」が花形です。
今回の位置ベクトルでは,「内心の位置ベクトル」の求め方と共通したものがあります。「内心」が「角の二等分線の定理」の内分の定理を使うのに対し,「傍心」は「角の二等分線の定理」の外分の定理(今回は 前提 としている)を使っているからです。
そして,「1つの傍心の位置ベクトル」がわかれば,b→ c→ a ,c→ a→ b,a→ b→ c
としていくことによって,同様に,「他の傍心の位置ベクトル」も求められてしまいます。これを「対称性」といいます。今回も「対称性」の偉大さに気づかされる結果となりました。そもそも「内分と外分」が対称的な存在で,内心と傍心の位置ベクトルは,内分を外分に読み替えれば求められてしまうのです。
山脇の超数学No59 三角形五心最後の砦・傍心の位置ベクトルに挑む
「科学と芸術」第58弾 複素数の割り算とピタゴラス数の関係 2024年 3月
今回は,「複素数の割り算とピタゴラス数の関係」です。
きっかけは,「高校数学Ⅱ」の授業を担当していたときでした。
「数学Ⅱ」では最初の方で学ぶ「複素数と方程式」の章で,まず出てくるのが「複素数の四則計算」です。その中で「2乗してマイナス1(-1)になる数」のことを「 i 」(虚数単位)で定義してから,複素数の加法,減法,乗法と順に導入していった後,複素数の除法(割り算)を定義します。この計算は,「平方根を含む式で,分母に平方根の和や差が入ったときの計算」によく似ています。
しかし,その結果で興味深いことがありました。ある複素数( a + bi )を,その共役な複素数( a-bi )で割ったとき,必ず「ピタゴラス数」が現れるという事実です。
現に,( 3 +2i )÷(3 -2i )を計算したとき,( 5,12,13 )が現れると,生徒の「あっ,ピタゴラ数や!」という反応がありました。続いて同じような計算をすると,ことごとく「ピタゴラス数」が現れます。そのうちに,( 8,15,17 ),( 7,24,25 ),( 20,21,29 ) というこれまであまり使ったことのない「ピタゴラス数」が出てきて,生徒は非常に興味を持ちます。
これは探求しなければいけません。
実際に探究していくと,「複素数平面」上に点 a + bi ,a-bi をとって,三角関数を用いて表示する(この表示のことを「極形式」といいます)ことで理由が解明されました。
「共役複素数」という考え方(概念)は方程式の解や複素数の計算にとって非常に重要であること,「複素数平面」に表示することによって理由が図形的に理解できること,そしてここでも三角関数が便利ですぐれた役割をはたしていることがわかりました。
「単純な事実の中にも偉大な性質がある」ことを示した例であるといえましょう。
山脇の超数学No58 複素数の割り算とピタゴラス数の関係
「科学と芸術」第57弾 三角形の内心・垂心・外心の位置ベクトル 2024年 2月
今回は,「三角形の内心・垂心・外心の位置ベクトル」です。
ベクトルは,現代の数学では,代数学と幾何学のいずれにも関係し,分析していく道具としてきわめて有用なものであり,物理学など他の自然科学にも応用されています。
どのようにして生まれたかというと,数直線=1次元,座標平面=2次元と発展してきて,特に座標幾何学は,伝統的な幾何学の厳密性を保ちつつ計算的な方法によって,図形の豊かな性質を明らかにしようとする「解析幾何学」として,画期的な意義を持っていました。x軸,y軸にz軸を加えれば,空間図形(3次元)の解析も可能となります。
ところが,19世紀になり,複素数が2次元の量や運動を表し,便利な道具の役割を果たすようになってくる(「複素数平面」の登場)と,3次元の量や運動を表す新しい数(概念)の発見へと数学者は駆り立てられました。その道はストレートには拓かれませんでした。やがて登場したのは,遥かに高次元の量までも一般化して扱う新しい概念と理論でした。それが「ベクトル」なのです。
ですから,ベクトルは「n次元ベクトル空間」(nは自然数)としてデビューしたのです。2次元や3次元で ベクトルは「矢印」(→)として表現できますし,(x1,y1),
(x1,y1,z1)という表示(成分表示)もまたベクトルの姿です。しかし,「n次元ベクトル」では,(a1,a2,a3,……,an ) という成分表示のみがベクトルの姿となります。このような多次元の量を扱うことが,データの処理などでは必要になっており,そこではベクトルと「行列」が活躍します。
さて,今回はベクトルの平面図形への応用です。平面図形では「位置ベクトル」が花形と言ってよいでしょう。「三角形の重心の位置ベクトル」は必ず学習する重要な概念ですが,三角形の五心で,その以外の「内心,垂心,外心の位置ベクトル」はどう表現できるのか,それが今回のテーマです。ベクトルの魅力を十分に味わってください。
山脇の超数学No57 三角形の内心垂心外心の位置ベクトル
「科学と芸術」第56弾 図形・数列・三角関数の融合問題 2024年 1月
今回は,「図形・数列・三角関数の融合問題」で,大学入試問題が題材になっています。三角形の3辺の長さが「等差数列」になっているというおもしろい設定の問題です。まず思い起こされるのは,3辺の長さが「3,5,7」である三角形です。 これは「七五三」の三角形といわれ,長さが7の辺の向かい側の角(対角)が120° になることで有名です。120° は弧度法では 2π/3 ですから,(1)はまさにこの三角形でした。しかし,一番短い辺aの対角Aの余弦(cosA)を求めなければなりません。(2) では,最大の角Cが最小の角Aの2倍のときのcosAを,(3) では,最大の角Cが最小の角Aより60° 大きいときのcosAをそれぞれ求めなければなりません。さあどうすれば解けるか?
実はこの問題,今回は一つの解と「(3)のみの別解」を示すにとどめましたが,他に二種類の別解が存在しています。それを,2023年9月15,16日の文化祭展示「難関大学数学講座の10年」での代表的な分野の6つの問題と解答・別解のうちの第2問として発表しました。この問題は別解が多いので,模造紙1枚半を使って掲示しました。200名を超える参観者があり,125名回収したアンケートの「一番“なるほど”と思った問題」では,16票第5位となり,残念な結果となりました。別解が多すぎたことも理由の一つかもしれません。
今回は,図形と数列を基盤に置きながら,三角関数を駆使する解のみを取り上げ,新たに「(3)のみの別解」を書き加えて,「山脇の超数学」での発表にいたりました。三角関数は「数学Ⅲ」の「微分法・積分法」でも中心的な役割を果たしますが,それを含めなくてもこれだけの素晴らしい多様性があることを知っていただけたら幸いです。
山脇の超数学No56 図形・数列・三角関数の融合問題
「科学と芸術」第55弾 積分と漸化式 2023年 12月
前回は,「確率と漸化式の問題」で,「n回の試行後の確率」を「漸化式」を利用して求める問題でした。漸化式は,「数学B」で学習する数列の概念と知識,公式を必要としますが,第n項(一般項)を求める問題に威力を発揮します。
数列の 第k項( k=1,2,3,……,n―1,n )の1次式で表される漸化式を「線形漸化式」といいますが,与えられた線形漸化式を満たす数列の 第n項 を計算する問題は計算機科学において最も基本的な問題の一つです。この問題に対するアルゴリズムとして 1985年に発表されたアルゴリズムは極めてシンプルかつ高速なアルゴリズムであり,35年間最速のアルゴリズムでしたが,2021年に演算回数がおよそ 2/3 であるアルゴリズムが発表されました。
「アルゴリズム」という名称は,現在のイラクのバグダードにおける9世紀の数学者アル=フワーリズミー(780年頃~850年頃)の名前から来ているといわれています。彼がインド数学を紹介した著作『インドの数の計算法』(825)が,12世紀にイギリスでラテン語に翻訳され,『インドの数におけるアルゴリトミ』という題で出版され,以後500年間にわたってヨーロッパ各国の大学で数学の主要な教科書として用いられました。この書は,冒頭に「algoritmi dicti(アル・フワリズミーに曰く)」という一節があるので『algoritmi(アルゴリトミ)』と呼ばれていました。
1920〜30年代,計算可能性のための数学モデル(計算モデル)がいくつも提案されたとき,「これらによって『計算可能なもの』を計算する手続き」をアルゴリズムと呼ぶようになりました。そして,現在では「人工知能(AI)とは,予期せぬ状況に対処するための一連のアルゴリズムを組み合わせたもの」というまでに,AIとの関係で頻繁に使われています。
「アルゴリズム」の話になってしまいましたが,積分法にも漸化式が登場し,複雑な積分計算もどんどん可能になったということです。今回はその一端を味わっていただきたいと思います。
山脇の超数学No55 積分と漸化式の問題
「科学と芸術」第54弾 確率と漸化式 2023年 11月
今回も,2023年9月15,16日に開催された文化祭での「難関大学数学講座10周年」の展示のアンケートで,前回の「最大値の問題(解析学)」と並んで第1位になった問題=「確率と漸化式」です。
実は,54回続いている「山脇の超数学」で,「確率の問題」を取り上げたのは初めてなのです。理由は,歴史的に見ると,図形(幾何学)や方程式・不等式(代数学),関数・微分積分(解析学)と比べると,確率が新しい分野であるからかもしれません。
しかし,確率がその中に属する「数理統計学」が高校数学の中に占める割合は,学習指導要領改訂のたびに高まってきています。「途中で止めた勝負の掛け金はどのように分配するのがよいか?」という問いがきっかけになって生まれたといわれる確率論は,現在では数学の最も重要な分野の1つに発展しているだけでなく,自然科学,工学,経済学で欠かせない道具の役割を果たしています。
今回は,「n回の試行後の確率」を「漸化式」を利用して求める問題です。「数学B」で学習する数列の概念と知識,公式が必要となります。それだけに「むずかしい」と思われがちですが,問題の条件をよく読み,確率で立式できれば,あとは「漸化式を解くだけ」となりますから,練習を積めば十分解決可能な問題となります。
2023年度大学入試分析で,「数学ⅠA」の範囲での「場合の数・確率」分野の出題率は,主要大学全体15.4 %(2022年15.4%),国公立大学16.7%(2022年14.8%)と,2位の整数分野6.1~6.6% を大きく引き離して第1位になっており,年々出題率が高まる傾向にあります。それがアンケートの第1位になった理由の一つかもしれません。
今後も機会があれば,「場合の数・確率」をどんどん取り上げていきたいと思います。
山脇の超数学No54 確率と漸化式の問題
「科学と芸術」第53弾 最大値の問題(解析学) 2023年 10月
「山脇の超数学No.53」をお届けします。
本校では,20023年9月15,16日に文化祭が開催されました。その中で,数学科は「難関大学数学講座10周年」の展示を行いました。「難関大学数学講座」は,2013年度当時の京都学園高等学校で産声を上げました。4月下旬から開始されたこの講座では,国公立大学2次入試の問題から,数学の考え方が応用でき,できるだけ別解が考えられるような問題を選抜して,生徒に取り組ませるようにしました。対象は,高校1年から3年までの数学担当者が推薦した生徒です。学年の壁を取り払うことによって,より切磋琢磨が生まれると考えました。事実,高校3年の真摯に取り組む姿に影響を受けて,まだ習っていない分野の問題などにも積極的に取組む高校1年・2年生の姿が見られるようになりました。2時間の講座で,最後の30分くらいは,問題を解いた生徒による発表があります。下の学年の生徒ほど大いに勉強になったことと思います。
毎週土曜日午前10:15~12:15におこなわれたこの講座の効果はすぐに表れ,東京大学,京都大学,大阪大学,神戸大学,あるいは医学部へ,講座受講者からどんどん合格者を出せるようになりました。不運にも前期入試で結果が出せなかった生徒も,「難関大学数学講座」を受講してきた誇りと学力,粘り,不屈の精神をもって,中期入試,後期入試で結果が出せるようになってきました。
文化祭の展示では,「平面ベクトル」「図形・数列・三角関数融合」「確率と漸化式」「図形と方程式・通過領域」「最大値の問題(解析学)」「整数」と,代表的な分野の6つの問題と解答,別解を発表しました。これらの問題には,数学の魅力が詰まっているといっても過言ではありません。
200名を超える参観者があり,アンケートは125名回収しました。「一番“なるほど”と思った問題」に対する投票数について,1日目が終わったところでは「確率」と「整数」が同点で首位でしたが,2日目「解析学」が挽回し,結局「確率」と並んで首位になりました。「整数」は第3位です。「確率」は女子を中心に人気が高まっています。より多くの人々に数学の魅力を知ってもらうために,開催してよかったと思います。
今回の「山脇の超数学」は,第1位になった「最大値の問題(解析学)」です。バラエティに富んだ別解をお楽しみください。
山脇の超数学No53 最大値の問題(解析学)
「科学と芸術」第52弾 正四面体の中心角 2023年 9月
今回紹介するのは「正四面体の中心角」です。
きっかけは、理科の先生からでした。私が参観した理科の公開授業で、先生がメタン分子の模型を作って生徒に示されたとき、「水素原子のなす角は109.5°」と説明していました。私は、なぜかその角は108°と根拠なく思い込んでいたので、そのことについて先生と少し議論しました。私が間違っていることに気づくと同時に、先生から「この話題をぜひ『山脇の超数学』に掲載してください」と依頼を受けたのです。
以来、1年以上が経ち、やっと本格的に「正四面体の中心角」について学習してみて、幾何学の奥深さを改めて認識しました。なぜ109.5°なのか?そこには深い理由がありました。この角度は「マラルディの角度」と呼ばれていて、水の水素結合にも関係しています。自然界を支配する角度である可能性も出てきました。
そして、毎日使っているB4、A4、B5という紙で容易に109.5°をつくることができることも驚きでした。それは、それらの紙の縦と横の比が1 : √2 (白銀比)になっているからでした。白銀比も黄金比とともにこれまで何度か学習し紹介もしてきました。しかし、「マラルディの角度」については気づきませんでした。というわけで、今回は「正四面体の中心角」=「マラルディの角度」の秘密を紹介します。
山脇の超数学No52 正四面体の中心角
「科学と芸術」第51弾 (続)ナポレオンの三角形 2023年 8月
今回紹介するのは「ナポレオンの三角形」と「ナポレオンの定理」の「複素数平面を用いた証明」です。
「複素数平面」は,19世紀初頭,ナポレオンとは敵対的な関係にあったドイツのブラウンシュヴァイク公(カール・ヴィルヘルム・フェルディナント大公)(1735~1806)に援助された数学者カール・フリードリヒ・ガウス(1777~1855)が創始したものです。
後に,ガウスの権威によって,複素数平面の概念・考えは水のように広がっていくことになります。奇しくもこの年は,フランスの二月革命を突破口とした1848年革命がヨーロッパ各地で起こった年であり,ウィーン体制が終焉した年でもありました。
「ナポレオンの三角形」を,ナポレオンの敵であったガウスの方法で証明する,ということはなかなか意義深いと思います。
前回の「三角関数による証明」も鮮やかでしたが,回転移動を得意とする複素数平面では「正三角形の証明」が鮮やかに決まります。しかし,「外三角形」と「内三角形」の面積の差が元の三角形の面積に等しい,という定理は、三角関数による証明の方が簡潔でわかりやすいことでしょう。
前回の証明と今回の証明を比較してみてください。共通する部分と,それぞれ独自の部分があって,おもしろいと思います。
(続)ナポレオンの三角形 複素数平面を使った証明
「科学と芸術」第50弾 ナポレオンの三角形 2023年 7月
「山脇の超数学No.50」をお届けします。
2018年4月より始めました「山脇の超数学」も50回目を迎えました。
今回紹介するのは「ナポレオンの三角形」と「ナポレオンの定理」です。発見者・命名者はわかっていません。
ナポレオン・ボナパルトは,1797年クーデターの後,フランス科学アカデミーにおける数学の地位を手に入れました。そして,一方では1798年にエジプト遠征という世界戦略に乗り出します。当面はイギリスを牽制する目的でしたが,かつてエジプトからインドまでの大帝国を築いたアレクサンドロスを模倣しようというものでもありました。
ナポレオンは幾何学が得意であり,ユークリッド幾何学の書『原論』が,エジプトの地・アレクサンドリアで完成されたことも念頭にあったことでしょう。彼は,エジプト遠征に,数学者や自然科学に携わる多くの学者を同行することを主張し,認められました。さらにナポレオン自身が遠征中に学習・研究できるようにと,荷車一台分の図書をもって回ったのです。そして,すぐれた数学者,科学者をエジプトに滞在させ,歴史の掘り起こしと新しい数学・自然科学の発見や発想の転換を目指しました。
エジプト遠征の際に,モンジュらの数学者から「ナポレオンの三角形」,すなわち「ナポレオンの定理」が献呈されたのではないか,と私は推測します。エジプトこそ,「幾何学の発祥地」であることが知られていたと思われるからです。ナポレオンが,「ピラミッドの上から,4000年の歴史が諸君を見おろしている」と言ったピラミッドは実に正四角錐であり,その建設は幾何学の成果・結晶でもあったからです。
今回紹介しますが,「ナポレオンの三角形」および「ナポレオンの定理」は,どの三角形に対しても成り立つ定理で,作図も結果も大変美しいものです。これまで「なぜナポレオンの名前がつけられているのか」は,「ロマンのあるなぞ」となってきましたが,私はエジプト遠征こそ,この名前にふさわしいと推測しました。
また,今回は「三角関数による証明」を紹介しましたが,平面幾何の定理,とりわけ「フェルマー点」を用いた証明が有名です。また「チェバの定理の利用」や「複素数平面による証明」も可能であり,またの機会に紹介したいと思います。
ナポレオンの三角形
「科学と芸術」第49弾 メルカトルの級数 2023年 6月
今回は,「メルカトルの級数」です。17世紀に活躍したドイツ出身の数学者ニコラス・メルカトル(1620~1687)が著書『対数術』(1668)でこれを紹介したことから有名になりました。発見者は,イギリスのアイザック・ニュートン(1642~1727)とオランダのヨハネス・フッデ(1628~1704)であるといわれています。同じ時期に,それぞれ独立に発見されたとされています。ちょうど,ドイツのライプニッツ(1646~1716)とニュートンがほぼ同じ時期に「微分・積分法」を発見したことに似ているかもしれません。そして,1660年からイギリスに渡り、研究を進めていて、ニュートンと近いところにいたニコラス・メルカトルが,この級数のことを発表したと考えられます。そこで,この級数は「ニュートン=メルカトル級数」と呼ばれることもあります。しかし,ニュートンは,数学だけでなく,物理学でも多大な足跡を残しており,ニュートンの名前を冠した定理や法則が多いため,現在ではこの級数は「メルカトル級数」で定着しています。
さて,今回の級数は,自然数の数列に順に-1をかけていった数の逆数を無限に加えていくと,log2に近づいていくというものです。前回の「ライプニッツ級数」と比べても,非常にシンプルな級数です。 log2 とは,「自然対数の底(ネイピア数)e を何乗したら2になるか」という数で,0.693147180…… という無理数です。また,e も2.718281828……という無理数です。
「メルカトル級数」も,前回の「ライプニッツ級数」と同様に,「積分法」を用いて証明しました。他にも証明する方法があります。また,後半で紹介している級数も「メルカトル級数」と等しくなるので,証明する一つの方法です。
メルカトルと聞くと,地図の「メルカトル図法」を連想しますが,地理学者のメルカトルは,ゲラルドゥス・メルカトル(1512~1594)で,数学者のニコラス・メルカトルより100年前の16世紀にネーデルラント(現在のベルギー、オランダ)で活躍した人でした。オランダが海洋国家として大きく発展していく時期です。そして,「メルカトル級数」が発見された17世紀はオランダの絶頂期でもありました。そのあたりの話はまた別の機会にしましょう。
メルカトルの級数
「科学と芸術」第48弾 ライプニッツの級数 2023年 5月
今回は,「ライプニッツの級数」です。17世紀から18世紀に活躍したドイツの数学者ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646~1716)が発見した公式です。それまで円周率π=3.141592………は,「円周÷直径」という方法,あるいは円に接する(内接・外接)正多角形を円に近づけていく方法でしか,その近似値を求めることができないと考えられていました。しかし,ライプニッツは,正の奇数の数列に順に-1をかけていった数の逆数を無限に加えていくと(この和の式を「無限級数」といいます),円周率の4分の1(π/4=0.785398……)に近づいていくことを提唱し,証明してしまったのです。ただし,この関係はすでに15世紀のインドの数学者マーダヴァ(1350?~1425)が発見していました。ライプニッツより300年ほど前です。公式の発見がマーダヴァの功績であることを示すために,「マーダヴァ-ライプニッツ級数」と呼ばれることもあります。ライプニッツの功績は,この公式を「積分法」を用いて証明したことです。ライプニッツは,イギリスの数学者アイザック・ニュートン(1642~1727)とともに「微分積分法の創始者」とされています。ライプニッツがニュートンとは独自に微分積分法を発見し,数学の重要な概念として確立していく過程で,この「ライプニッツ級数」を発見したことに大きな意義があると思います。いくつかの証明がありますが,ここではtan x の積分を使う方法を紹介します。前々回,前回に続いてのtan x(tanθ)の登場です。三角関数の素晴らしさを味わってください。
ライプニッツの級数
「科学と芸術」第47弾 tan(θ/2) と複素数平面の関係 2023年 4月
今回は、前回の続編で、「tan(θ/2) と複素数平面の関係」について紹介します。2次方程式・3次方程式の虚数解として登場した虚数単位iを含む複素数を、座標平面上の点で表すという画期的な発明が「複素数平面」です。1811年頃に数学者ガウスによって導入されたため、「ガウス平面」とも呼ばれています。複素数の幾何的表示はガウス以前にも知られていましたが、今日用いられているような形式で複素数平面を論じたのはガウスです。さらに、複素数を原点からの距離と回転角で表示する「極形式」によって、複素数の利用が格段に進むようになりました。その回転角を偏角といい、そこにtan(θ/2) が関係しているので、前回の「ヘルパーtan(θ/2)」の性格がより明らかになりました。「ヘルパー」という言葉は私の造語ですが、それに関連した問題も紹介しています。ぜひ興味を持っていただきたいと思います。
tan(θ÷2)と複素数の関係
「科学と芸術」第46弾 三角関数のヘルパー tan(θ÷2) 2023年 3月
「山脇の超数学No.46」をお届けします。三角関数は、天文学からの要請で「三角比の表(正弦の表)」が作成されたことに始まり、後に鋭角三角形での辺の比としての「三角比」に発展して、「図形と測量」に大いに応用されるようになります。さらに、座標幾何学の進展に伴って、単位円を用いた定義による「円関数」という性格をもつようになって、解析学における中心的な存在となっていきます。そして、超越関数として、指数関数、対数関数とともに、様々な分野で用いられています。例えば、波や電気信号などは正弦関数(sin)と余弦関数(cos)とを組み合わせて表現することができ、この事実はフーリエ級数およびフーリエ変換の理論として知られ、音声などの信号の合成や解析の手段として利用されています。また、ベクトルの内積や外積は余弦関数および正弦関数を用いて表すことができ、ベクトルを図形に対応づけることができるのです。今回はtan(θ/2) の役割について紹介します。すべての三角関数との相互関係を持つtan(θ/2) は、積分法や(三角)方程式で「ヘルパー」としての役割をもちます。ちょうど、リンパ球の中にあって、B細胞と協力して、ウィルスなどが体内に入ってきた際に抗体をつくり、放出する役割を持つ「ヘルパーT細胞」に倣ってこの名前をつけてみました。
三角関数のヘルパー tan(θ÷2)
「科学と芸術」第45弾 三角形の線分の比と面積比 2023年 1月
2023年の第1回「山脇の超数学No.45」です。今回は,三角形の3つの頂点A,B,Cと,向かい合う辺を「同じ比に内分する」点L,M,Nをそれぞれ直線で結んだとき,その3つの直線で囲まれた△PQRの面積と△ABCの面積の比を求めるという問題に取り組みます。まずは図形の性質を使って,平行線の比から連比にもちこんで面積比につなげていきます。それぞれ辺を同じ比に内分していますから、△PQRのまわりにある一つの三角形の面積がわかれば,それを3倍して△ABCから引けば,△PQRの面積の△ABCの面積に対する比がわかります。よく数学ではそれを「一般化する」ことを考えます。m : n の比に分けるものとして,今度は「メネラウスの定理」という便利な定理を使って,結論につなげています。非常に整った式になります。m=1,n=2を代入すると,△PQRの面積の△ABCの面積に対する比はたちどころに計算できます。次は,ベクトルの利用です。ベクトルのルール(約束事)さえわかれば,どんどん進めていくことができ,最後も鮮やかに決まります。さらにm : n の比に分けるという「一般化した問題」はベクトルの得意とするところなのです。今回は,平面図形のおもしろさと,道具としてのベクトルの強力な役割を紹介しました。
三角形の線分の比と面積比
「科学と芸術」第44弾 フォイエルバッハ200周年 2022年 12月
2022年も最後の月を迎えました。2022年は,数学者にとって記念すべき年です。 「山脇の超数学No.42」では,イギリスの数学者エドワード・マン・ラングレーが学術雑誌『マセマティカル・ガゼット』に「ラングレーの問題」を発表してから,今年で100周年になることを紹介しました。以来100年間,この問題は多くの人々に解かれ,親しまれてきました。「No.43」では,フランスの数学者フーリエが,200年前の1822年に『熱の解析的理論』を出版し,その中で「フーリエ展開」,「フーリエ級数」の理論を打ち立て,現在自然科学,工学を始め,様々な分野で応用されていることを紹介しました。そして,今年の最後はドイツの数学者フォイエルバッハ(1800~1834)です。彼は,すべての三角形に「九点円」があることを発見し,「九点円」に関する美しい定理があることを,200年前の1822年に論文で発表しました。ここでは「三角形の内接円は九点円と接している」という定理とその証明を紹介しますが,この証明は「高校数学A」の「図形の性質」までを学習していれば理解が可能です。関係する図は微細なものになるため,今回は手書きの図にしました。少なくとも四千年の歴史をもつ幾何学(図形の学)ですが,このような図形の性質があると知られたのは比較的新しいことなのです。「図形の奥深さ」を示すものです。空間図形も含めて,図形にはまだまだ知られていない魅力的な性質があるかもしれません。図形に目を向けてみましょう。
フォイエルバッハ200周年
「科学と芸術」第43弾 フーリエ/シャンポリオン200周年 2022年 11月
前回は「ラングレーの問題100周年」としましたが,今回は「フーリエ/シャンポリオン200周年」としました。ちょうど200年前の1822年,フランスの数学者フーリエは,『熱の解析的理論』を出版しました。これは,「熱が伝導する」という現象を「熱伝導方程式で表現する」ことが主旨となる論文ですが,その中でフーリエは「フーリエ展開」,「フーリエ級数」の理論を打ち立てたのです。簡単にいうと,ほとんどすべての関数は「三角関数の数列の和(これを級数という)」で表されるということを述べたのです。これは驚きの理論でした。しかし,次第に数学者の間で認められるようになり,現在では,例えば「三角関数の級数で音の波形(グラフ)をつくり出し,ピアノの音を再現する」というような技術で利用されています。音の波形のみならず,「地震波」,医療の分野では「心電図」,経済の分野では「物価の変動」なども,フーリエ級数とそれを分析する「フーリエ解析」によって,将来の予測などができるようになってきました。ちょうど同じ年1822年,フランス科学アカデミーで,シャンポリオンという言語学者,エジプト学者が,古代エジプトで用いられていたヒエログリフの解読に成功したことを発表しています。実は,シャンポリオンはフーリエの影響を強く受けていました。彼は,フーリエと出会ったことで,古代エジプトの文字=ヒエログリフの解読に生涯をささげました。シャンポリオンが解読に成功したおかげで,古代エジプトの,王のみならず,民衆がどのような生活をしていたのか,どのように考えていたのかなど,古代エジプト文明の全容が明らかになってきたのです。200年前1822年は,そのような画期的な年だったのです。
フーリエ/シャンポリオン200周年
「科学と芸術」第42弾 ラングレーの問題100周年 2022年 10月
今回は「ラングレーの問題100周年」としました。「ラングレーの問題」が,イギリスの数学者エドワード・マン・ラングレー(1851~1933)によって,” A Problem ” のタイトルで発表されたのが,1922年10月でありました。2022年10月で,ちょうど100周年を迎えました。去る9月16日・17日の高等学校文化祭で,「ラングレーの問題100周年~数学別解の世界~」の展示をおこないました。これまで「山脇の超数学」第25弾と26弾で解答を合わせて4つ紹介し,前回第41弾で5番目の解答を紹介しましたが,文化祭展示では新たに4つの解答を紹介し,合計9つの解答を掲示しました。そもそも「ラングレーの問題」には「元の解」というものは存在していませんから,すべてが「別解」になるわけです。これまでの数学の定理,たとえば「三平方の定理」などは100を超える証明方法があり,すべて「別解」といえます。ですから「別解」を考えることは,数学を探究することの本質につながります。今回の展示では,9つの解答を見て,「一番『なるほど』と思った解の番号を以下に記入して,投入箱に入れてください」というアンケートを実施しました。さて,どの解に票が集まったでしょうか?また,今回は100周年を記念して,新たに「解10」を考え、発表しましたので,ぜひご覧ください。今後も「ラングレー」は続きます。
ラングレーの問題100周年
「科学と芸術」第41弾 再びラングレーの問題! 2022年 9月
今回は「再びラングレーの問題」としました。「ラングレーの問題」としてとり上げるのは3回目です。1回目はNo.25(2020年11月),2回目はNo.26(2020年12月)でした。この有名な図形の問題を,平面図形の定理から求めていく解答を2つと,三角関数を用いたユニークな解答を2つ紹介しました。No.37(2022年5月)では,「変形ラングレーの問題」として,図形は同じで問われる角度が違う問題とその解答を2つ紹介しました。なぜ「ラングレー」にこだわるのでしょうか?実は,イギリスの数学者エドワード・マン・ラングレー(1851~1933)によって” A Problem ” のタイトルで「ラングレーの問題」が発表されたのが,1922年10月であったのです。この問題は間もなく100周年を迎えようとしています。今回は,5番目の解答を発表します。今回は「正18角形」と関係がある特別な解です。そして,ラングレーがどのようにしてこの問題を思いついたか,についても探っていきたいと思います。そこには「正18角形」の世界が広がります。ところで,「正18角形」はコンパスと定規だけでは作図できません。「正17角形」は,コンパスと定規だけで作図できることを数学者ガウスが証明したにもかかわらず,です。なぜ「正18角形」は作図できないのか? それは今回のテーマではありませんが,どこかでまた論じることにしましょう。
再びラングレーの問題
「科学と芸術」第40弾 (続)式の計算と組立除法の威力! 2022年 8月
今回は,前回の「式の計算と組立除法の威力!」の続編です。前回,「組立除法」に黄金比φをもち込む方法を考えました。試行の結果,同じ結果が求められることがわかりました。これは「組立除法の拡張」です。
今回は,前回の最後で少し触れましたが,「組立除法」に虚数i をもち込んだらどうなるか,がテーマです。
「組立除法」のよいところは,割り算の結果,すなわち「商」がすぐに見えるということです。虚数 i で「組立除法」を実行すると,前回と同じ関数 f ( x ) が x-i で割り切れることがわかりました。これは f ( i ) を計算したら0 になるということと同じことです。しかし,商の係数に 虚数 i が入ってしまいました。そこで,今度は –i で「組立除法」を実行すると, f ( x ) が x+i でも割り切れることがわかりました。これで実数係数の商となり,「実験」成功です。今回は,さらに様々な虚数で「組立除法」を試みています。最後は,1の虚数3乗根(立方根)として知られているω(オメガ)で「組立除法」を実行すると,これも成功です。
「組立除法」は,高校数学では「数学Ⅱ」で登場し,因数分解や高次方程式を解く際に有効ですが,微分積分法の計算でも有効に使えるので,大学受験には必須の道具です。それだけでなく,「代数学」のおもしろさを教えてくれる教材でもあるのです。
(続)式の計算と組立除法の威力!
「科学と芸術」第39弾 式の計算と組立除法の威力! 2022年 7月
今回は,「ある値に対して,“その逆数+その逆数の3乗+5乗+7乗”の値を求めよ」という問題を考察するところから始まります。まともに計算したら,とんでもなく時間がかかりそうです。そこで問題にも「できるだけ簡単に計算できる方法を示せ」という指示があります。まず逆数をとると,私がこの「超数学」でたびたび紹介してきた「黄金比」の数そのものになってしまいます。黄金比には,「(黄金比の2乗)=(黄金比)+1」という特別な性質がありますから,これを使って,3乗・5乗・7乗の数も「黄金比の1次式」(aφ+bの形)に変えてしまいます。「黄金比の1次式」に変われば,あとは黄金比の数を代入するだけで式の値は求められます。与えられた7次式を,黄金比を解にもつ2次方程式の左辺で割って,その余りの1次式に黄金比の値を代入する方法もあります。これは「数値代入法」として知られている方法です。しかし,長い式の割り算を根気よく計算することが必要です。そこで,私は,よく知られている(高校2年の数学で学習する)「組立除法」に直接黄金比φを持ち込む方法を考えました。試行の結果,同じ結果が求められることがわかりました。これは「組立除法の拡張」です。このような内容は,数学では「代数学」の分野に属し,なかなか興味深いものがあります。これもまた数学の姿なのです。
式の計算と組立除法の威力!
「科学と芸術」第38弾 ラマヌジャンの問題を! 2022年 6月
今回は,インドの数学者ラマヌジャン(1887―1920)が若き日に考え出した数学の問題を2題紹介します。2題とも「平方根の根号の中にまた根号が存在する」,いわば「多重根号」の形をとっています。ちょっと考えただけではなかなか思いつきませんが,問題1の方は電卓で順番に計算していくと「3」に近づいていくことがわかります。問題2の方はそれでも見当がつきません。
実際に問題1 の方の答えは「3」であり,問題2の方は三角関数が登場します。よく見ると三角関数の「循環性」,「周期性」を利用したものだとわかり,私がこれまで「ラングレーの問題」の「三角関数を使った別解」でよく利用してきたものであったのです。ということで,数学は表面的には関係ないように見えても,実は奥の方でつながっている性質がたくさんあります。ラマヌジャンはそれに気づいていたと思います。彼は,アジアから出た魅力あふれる数学者の1人です。
ラマヌジャンの問題を!
「科学と芸術」第37弾 変形ラングレーの問題 2022年 5月
2022年度の第2弾=通算第37弾は、第25弾・第26弾に続いて「ラングレーの問題」をとり上げました。今年は、数学者ラングレーが1922年,学術雑誌に「図形で角度を求める問題」を掲載して100周年にあたります。
この「角度を求める問題」を解くのは簡単ではなく,さまざまな解法があっておもしろいため,「ラングレーの問題」として人々の関心を惹きつけてきました。100年たった今でも色あせていないといってよいでしょう。今回は,同じ形ながら,未知の角度が異なるという「変形ラングレーの問題」にチャレンジしました。一般的には「解答1」のように,中学校数学で学習する図形の性質を利用して求めていくのですが,私は第25・26弾のときと同様に「三角関数を用いた解答2」を考えました。三角関数の魅力,図形の奥深さを味わってください。
変形ラングレーの問題
「科学と芸術」第36弾 2次曲線の焦点の性質を考える 2022年 4月
今回は、図形として「楕円」と「双曲線」をとりあげます。楕円と双曲線には、必ず「焦点」が2つあります。英語でいうと、フォーカス(Focus)です。この言葉の語源は、一方の焦点に光を置くとその光は曲線(あるいは曲面)で反射して、もう一方の焦点に集まるというところからきています。これは楕円について言えることで、双曲線は少し複雑ですが、文字通り、「焦げる(こげる)」が語源なのです。この物理学的な性質は、数学で座標を使って証明できます。そして、その証明の最後では「角の二等分線の定理の逆」というシンプルな平面図形の定理を使うのです。楕円と双曲線は、形が全然違います。しかし、座標を使うとその方程式は極めてよく似ています。証明も、きわめて対称的に進められ、登場する式が驚くほど共通しています。「角の二等分線の定理の逆」の使われ方も対称的です。ここに数学の「均整のとれた美しさ、奥深さ」を感じます。今回は登場しませんでしたが、2次曲線の一つである放物線では、軸と並行に進んできた光や電波は放物線(面)で反射してすべて焦点に集まるという性質があり、衛星放送の受信に使われるパラボラアンテナに応用されているのです。もちろんこの性質も証明できます。それでは、証明の過程をじっくりと味わってください。
2次曲線の焦点の性質
「科学と芸術」第35弾 2022に因む問題を考える 2022年 3月
今回は,図形から離れて,「2022に因む問題を考える」としました。これまで,その年の数を題材にした入試問題は数多く出題されてきました。去る2月25日からスタートした国公立大学前期入試(1月実施の「共通テスト」に対して「2次入試」と呼ぶことが多い)では,東京大学,京都大学がそろって「2022に関する問題」を出題しました。他の大学はまだ調査していませんが,国公立大学の中で最大の学生数を擁し,入試では最難関の大学である両大学が,そろってその年の数に関する問題を出題することは珍しいことです。東大は数列と整数に関係する問題,京大は常用対数に関する問題で,ともに興味深い問題です。「2022」は,入試問題にしやすい,また問題に相応しい数なのかもしれません。
私は,2022年の初めに,「2022に因む数学問題」を5題考えました。そして,1月授業開始日に生徒に出題しました。多くの解答が寄せられましたが,ここに解答を発表します。
今後,東大,京大以外のユニークな問題が見つかりましたら,紹介したいと思います。
2022に因む問題を考える
「科学と芸術」第34弾 図形の問題を探究する 2022年 1月
今回も図形の問題ですが,平面図形の中でもっともよく問われる「円と直線の問題」を取り上げています。原点中心で半径1の円(単位円といいます)に,第1象限で接線を引きます。その接線がx軸とy軸から切り取る線分の長さに関する最小値の問題です。最小値を求めるために,媒介変数として三角関数 を使って表現し,微分法によって求める方法をまず紹介しています。(「高校数学Ⅲ」の範囲)残りの2つの解法に共通するのは,「相加平均と相乗平均の大小関係」で,「高校数学Ⅱ」で学習します。微分法に比べると,少ない式変形で解答が得られます。この問題も大学入試問題です。結果が非常に整った形をしていることに驚きます。堅実な微分法による解,式変形により鮮やかに導く「相加平均・相乗平均」の解,どちらもできるようになると,数学の世界が広がります。
図形の問題の探究
「科学と芸術」第33弾 三角形内部の点の軌跡と面積 2021年 12月
今回は,鋭角三角形の内部にある条件を満たすように点をとっていきます。すると,それらの点はある曲線の上にあることがわかります。その曲線と辺で囲まれる図形の面積が,いかなる鋭角三角形でも,その三角形の面積の3分の1である,という性質を証明しています。
この証明をするために,座標軸をとり,内分点の公式にあてはめて,条件を満たしながら動く点の座標を,媒介変数(パラメータともいいます)t を使って定めます。
このあとが,積分法で面積を求めることで鮮やかに証明が完結するのです。
こういう問題が,大学入試問題で出題されるということも驚きです。入試問題の中では,とりわけエレガントで,感動的な問題の一つであると思います。
三角形内部の点の軌跡と面積
「科学と芸術」第32弾 三角関数のグラフと黄金比 2021年 10月
今回は「三角関数のグラフと黄金比」として,前回からの連続性があります。
まず y=cos x のグラフ と y=tan x のグラフが, y座標 1/√(φ ) である点で交わることに始まり,両グラフがその交点で直交することがわかってきます。
さらに,第1象限において,y=sin x のグラフ,y=cos x のグラフ,そして y=tan xグラフで囲まれた図形の面積を求めるところまで進みます。やはり興味深い性質が現れます。「積分法」が活躍するところです。
三角関数と黄金比φは深く関わっているのです。
三角関数のグラフと黄金比
「科学と芸術」第31弾 二等辺三角形の問題 2021年 9月
今回は「二等辺三角形の問題」として、図形の問題です。しかし、単に図形の問題ではなく、等辺の最小値を求めるために微分法も登場します。問題が「 最小値をとるときのsin θ の値を求めよ」とあるので、三角関数を用いて解くこともできます。
まず私は、「最小値をとるときは特別な場合なので、正三角形ではないか?」と思いました。しかし、三角関数で式を立てても、AO = x として式を立てても、簡単ではありませんでした。 x の式で微分する(導関数を求める)と、x = φ(黄金比)のときに最小となることがわかったのです。やはり正三角形ではなかったのです。
そして、この三角形を調べていくと、次々と興味深い性質が浮かびあがってきました。
「黄金比」は、2019年3月から2020年2月まで、この「超数学」で連載したテーマでしたので、この三角形を追究しました。ぜひチェックしてください。
二等辺三角形の問題
「科学と芸術」第30弾 平面ベクトル 2021年 7月
今回は「平面ベクトル」です。ベクトルは、19世紀後半に誕生した、比較的新しい数学の概念ですが、今では「線形代数学」の主役となっており、数学だけでなく物理学への応用も目まぐるしく、発展してきています。
ベクトルは、一時「高校数学Ⅰ」(高校生必履修)に導入されたりして、数学教育の「現代化」に一役かって、脚光を浴びました。現在は、高校2年で学ぶ「高校数学B」に入っています。
さて、今回は「ベクトルの内積の最大値」という問題です。それに対して、3通りもの解を示しています。「解1」は2次方程式の判別式を用いるもので、伝統的な数学の解法です。「解2」は座標幾何学によって解いたもので、円の性質をうまく使って、「点と直線の距離」が活用されています。
そして「解3」が、ベクトルそのものを道具とした解で、図形も登場しています。「解1」「解2」は高校数学の中で習得しておかなければならないものですが、「解3」によって,最大値の数値の表す意味が明らかになったといえるでしょう。
平面ベクトルの問題
「科学と芸術」第29弾 倍数判定法(続) 2021年 4月
前回に引き続き「倍数判定法」です。
今回はまず「7の倍数判定法」の中で、3桁の数が7の倍数であるかどうかを早く判定する方法を示しました。
続いて「11の倍数判定法」です。これは以前から知られている有名なものと言ってよいでしょう。
次に「13の倍数判定法」ですが、これが「7の倍数判定法」と同じであることに気がつきました。
3桁の数が13の倍数であるかどうかを早く判定する方法も紹介しました。
やや複雑ですが、理由をわかった上で覚えられれば使いやすくなります。
今回の最後に「17の倍数判定法」を示しました。これは私のオリジナルであると自負しています。
かなり強引な「判定法」ですが、おもしろいです。
すべては「合同式」のおかげである、と思っています。
ぜひ「合同式」に慣れてどんどん使うようにして下さい。
これで、2~17までのすべての自然数の「倍数判定法」が明らかになったといってよいでしょう。
倍数判定法(続)
「科学と芸術」第28弾 倍数判定法 2021年 3月
今回は、2020年度を締めくくり、2021年度のスタートにふさわしいものとして構想しました。
選んだテーマは「倍数判定法」です。
ほとんどがよく知られたものですが、もう一度見直してみると興味深いものがあります。
実は、「倍数判定法」には私たちが当たり前のように使っている「10進法」が根底にあるのです。
そのことを最もよく感じさせるのが、「9の倍数判定法」です。
そして、「9の倍数判定法」を,高校数学で学習する「合同式」から見直してみると発見があります。
ぜひ「合同式」の便利さを味わってください。「9の倍数」は同時に「3の倍数」でもありますから、
「3の倍数判定法」も同じ方法でいけるわけです。
さらに、今回は「7の倍数判定法」に迫ってみました。従来「7の倍数判定に特別なものはない」という
表記がされていましたが、やはり「合同式」を用いると、7の倍数±1が3桁ごとに現れてくることがわかり、
この判定法が一般に出回るようになったと考えられます。
やや複雑な判定法ですが、ぜひいろいろな数で試してみてください。おもしろいですよ。
倍数判定法
「科学と芸術」第27弾 十二人の数学者たち 2021年 2月
今回は、2018年12月(「超数学」第7弾)以来、2年2か月ぶりの「正十二面体」の登場です。前回は「2019年のカレンダーをつくろう」というタイトルでした。今回もやはり2021年のカレンダーになっているのですが、「十二人の数学者たち」ということで、12面に12人の数学者の肖像を貼りました。
高校数学の教科書の各章の扉の部分に登場する数学者を中心に選出しました。よく名前の知られた、各時代を代表するような数学者ばかりです。各面には、肖像以外にも、その数学者が発見した、あるいは研究した数式や定理、図形なども貼付しました。
写真は、この十二面体の各面が見えるように6枚を掲げました。そして、各数学者の業績も簡単に記しています。数学史の流れがざっとつかめるようにもしています。ぜひ数学の歴史に関心を持ってください。
さて、約53万5000人が受験した「大学入試共通テスト2021」の第1日程2日目(1月17日実施)の「数学Ⅱ・数学B」の第5問「ベクトル」の問題で、何と「正十二面体」が出題されました。また機会があればその問題を紹介したいと思います。
十二人の数学者たち
「科学と芸術」第26弾 (続)ラングレーの問題 2020年 12月
今年最後の「山脇の超数学 第26回」は,前回に続いて「(続)ラングレーの問題」としました。
(解答3)は当初からあった有名な解です。補助線により正三角形を2つ作って,三角形の合同をうまく使っています。
(解答4)は,今回も私独自の解で,三角関数を利用したものです。(解答2)よりもうまく仕上がったと思っています。
2つの三角形の相似さえ証明できれば,一気に解答にいたります。問題は辺の比をどう簡単に表現するか,というところです。
その際に,「三角関数の加法定理」から導かれる「積を和に変換する公式」を活用しています。
引き続き,皆さんも解法を考案してください。やはり奥の深い問題だと思いませんか?
(続)ラングレーの問題
「科学と芸術」第25弾 ラングレーの問題 2020年 11月
今回は、これまでとはガラッと雰囲気を変えて、「ラングレーの問題」としました。
エドワード・マン・ラングレー(Edward Mann Langley, 1851~1933)は、イギリスの数学者です。1894年に学術雑誌『マセマティカル・ガゼット(Mathematical Gazette)』を創設し、様々な論文を発表されています。そして、1922年に掲載されたのが「ラングレーの問題」(“Langley’s Adventitious Angles”)です。
三角形の内角の和は180˚とか、三角形の底角が等しいから二等辺三角形になるとか、正三角形だから三辺が等しいとか、対角の和が180˚だから円に内接するとか、円に内接するから円周角が等しいとか……の平面図形の知識があれば解けるのですが、補助線を引かないとなかなか結論にたどりつかないのが特徴です。100年たっても色あせない素晴らしい問題だと思います。今回、私は独自に三角関数を利用する解法を考えました(解答2)。皆さんも独自の解法を考えてみてください。
ラングレーの問題
「科学と芸術」第24弾 三角関数のグラフの話 2020年 9月
今回は、再び三角関数の話です。三角比は最初、古代ギリシャで、半径を一定にしたとき扇形の中心角に対する弦の長さ(これが「正弦」)を求めるところから始まりました。それが中心角そのものよりもその半分の角の方が計算しやすいことがわかり、直角三角形の辺の比へと発展します。その後数学はイスラム世界で発展し、サンスクリット語の jīvā (弦) は借用されてアラビア語の jibaとなり、翻訳家が (単語が母音なしで記述されるという理由から) 間違えて jayb をラテン語の sinus に翻訳してしまいました。それから、ヨーロッパでは一般的にsin が使われるようになったのです。「余角」(たして90°になる別の角)のsin がcos (cosine)(「余弦」)であり、これも定着しました。そして、現在のように三角関数として使われるようになったのは、18世紀の数学者オイラーの功績によるところが大きいのです。
さて、今回は大小比較に始まり、三角関数の微分を始め、壮大な三角関数の世界の一端を紹介します。
三角関数のグラフの話
「科学と芸術」第23弾 高次方程式の解法 2020年 8月
今回は、まずカルダノの話から入ります。タルタリアが発明した「3次方程式の解の公式」(*)を、タルタリアとの約束を破って自らの書『アルス・マグナ』に発表してしまった数学者カルダノ。しかし、カルダノの言い分は、タルタリア以外にも(*)を発明した人がいたこと、広くどのような3次方程式にも適用できるように改良したものを発表したこと、というものです。それでも約束を破ったことはとがめられるべきで、現在では(*)のことを「タルタリア-カルダノの公式」と呼ぶようになりました。
しかし、それにしても初めて「虚数」の考え方を述べたことは、『アルス・マグナ』を不滅の価値をもつ数学書としました。
後半は、高校数学で学習する「高次方程式の解法」を紹介しています。さらにn次方程式から「代数学の基本定理」までをざっと述べています。ここには数学の壮大な拡がりがあるのです。
高次方程式の解法
「科学と芸術」第22弾 3次方程式の解の公式2 2020年 6月
「3次方程式の解の公式」の第2回です。今回は,3次方程式の解の公式を活用する中で、「虚数」が誕生したことの紹介です。実際には存在する数でない「虚数」は、人間がつくりだした「想像上の数」です。しかし、3次方程式の解を表現しようとすると、どうしても「虚数」を使わないと不可能であることがわかりました。その後、「虚数」は実際に存在する数である「実数」と合わせて、「複素数」と呼ばれるようになり、数学の世界を大きく広げました。現代の科学者や技術者は、虚数を駆使してさまざまな現象を調べています。虚数は現代の科学技術になくてはならない「すごい発明品」なのです。その発端を開いたのは、3次方程式の解の公式を発見したタルタリアです。タルタリアは、幼いころに兵士に切りつけられて口蓋に傷を負ったため、言語障がいに悩まされました。しかし、彼は独学で数学を学び,数学を教える中で自らの数学理論を鍛えていった類まれな数学者です。自ら「タルタリア」(「吃音」という意味のイタリア語)と名乗ったように、言語障がいのコンプレックスを跳ね返し、それを逆にモチベーションとして自らを高めた数学者として、後世の数学を学び、研究する人々に、あるいはハンディを抱えながらも学習と研究を続けている人々に、大きな勇気を与えています。
3次方程式の解の公式2
「科学と芸術」第21弾 3次方程式の解の公式1 2020年 5月
4月に「いざ、新学期!」と意気込みましたが、3月からの休校の連続となり、5月11日からはオンライン授業の開始となりました。ウェブ上でどう数学の授業を展開するか、苦心しました。これを何とかやり通し、6月1日からやっと学校が再開されることになりました。この「超数学」も閉講していましたが、学校再開を前にして、テーマを「三角比」から「3次方程式の解の公式」に変更し、その第1回をここに発表します。非常に歴史の重みを感じさせる公式であると思います。
3次方程式の解の公式1
「科学と芸術」第20弾 三角比の応用Ⅰ正弦定理 2020年 3月
「黄金比Φとは?」のシリーズが終了し、2020年度の新しいシリーズは「三角比・三角関数」をテーマとして進めていきます。
まず、いかなる三角形でも成り立っている「正弦定理」です。三角比のうち、sinが登場する定理なので「サイン(sin)の定理」と呼んでもよいでしょう。現に英語では、sine formula、またはLaw of sinesと表現されています。
さあ、どんな定理でしょうか。簡単に表現すれば「三角形の辺の比は、その向かい側の角の正弦( sin )の比と等しい」となります。覚えやすい定理です。詳しく見るとともに、2020年、つまり最新の大学入試問題を正弦定理を使って解いてみました。
三角比の応用Ⅰ正弦定理
「科学と芸術」第19弾 「黄金比Φ」とは?第10回 2020年 2月
このところずっと続けてきた「黄金比Φとは?」のシリーズも、今回で最終回となりました。
これまで Φ^2=Φ+1、 Φ^3=2Φ+1 など、Φの計算が簡単にできることに触れてきましたが、今回は、Φ^n がどのような式になるのか、という話から始めます。何とここに、たびたび登場した「フィボナッチの数列」が関係しているのです。(「Φ^n」は「Φのn乗」を表します)
後半は、代表的な関数のグラフとΦとの関係です。Φが「絆」になっていろいろな関数のグラフをつないでいるのです。このように数学には、π(円周率)とかe(ネイピア数)のように、様々な事象や関数を結びつける絆となる数が存在するのです。
「黄金比Φ」とは?第10回
「科学と芸術」第18弾 「黄金比Φ」とは?第9回 2020年 1月
見事に単位円(半径1の円)に内接する正五角形の頂点に並ぶのです。
このことを発展させていけば「1のn乗根」(n=6,7,8,……)も正n角形の頂点に並ぶことになります。これが複素数平面のすごさです。
後半は、正五角形の面積、さらに正十二面体の体積までもが、黄金比Φで表すことができることの説明です。
細部で計算を省略していますが、これまでの「黄金比の話」を振返っていただければ、その理由をわかって
いただけると思います。
いよいよ「黄金比の話」も大詰めとなってきました。
「科学と芸術」第17弾 「黄金比Φ」とは?第8回 2019年12月
「科学と芸術」第16弾 「黄金比Φ」とは?第7回 2019年10月
今回は、まず前回からの続きで、sin54° = φ/2 ,sin18° = (φー1)/2 と表現が広がります。
sin36°、sin7
最後にこれらの三角関数の値を座標平面上にとるとどうなるでしょ
三角関数の様々な性質を確認しながら進めていきます。
「黄金比Φ」とは?第7回
「科学と芸術」第15弾 「黄金比Φ」とは?第6回 2019年9月
「黄金比Φ」とは?第6回
「科学と芸術」第14弾 「黄金比Φ」とは?第5回 2019年7月
5回目は、前回登場した「フィボナッチ数列」が自然界にどのように現れているかを、その名前の由来となった13世紀イタリアの数学者フィボナッチの話を交えながら、紹介します。でも今回紹介するのはほんの一例で、フィボナッチ数と黄金比は生物界にとどまらず、台風や低気圧,渦巻銀河などにも見られる渦巻線(対数螺旋(らせん))とも関係があるほど、自然界と多様に関わっています。
後半は、4回目に登場した、φを解に持つ4次方程式から発展して、その方程式の左辺の4次関数のグラフまでを探究しました。
「黄金比Φ」とは?第5回
「科学と芸術」第13弾 「黄金比Φ」とは?第4回 2019年6月
そこには2つの2次方程式が関係していることがわかります。
続いて、いよいよ「 フィボナッチ数列 」の登場です。
1、 1、 2、 3、 5、 8、 13、 21、 34、 55、‥という数の列は、自然界にもよく登場します。
これは、前の2つの数を加えると必ず次の数になる、という単純な仕組みです。
この数列と黄金比がどのように関係しているのでしょうか。そこのところを解明しました。
「黄金比Φ」とは?第4回
「科学と芸術」第12弾 「黄金比Φ」とは?第3回 2019年5月
正多角形の対角線について考えてみましょう。
正方形(正四角形)の対角線は 2本 あって、1辺の長さが1の正方形の対角線に長さは √2 (=1.414…) です。
正五角形の対角線は 5本 あって、1辺の長さが1の正五角形の対角線の長さはすべて等しく、 φ (=1.618…) であるのです。
これが正六角形になると、対角線は 9本 で、√3 (=1.732…) のものが 6本、2 のものが 3本 と、長さが異なってきます。
ですから、正五角形は非常に整った図形であるといえます。
今回は、そこのところの謎の一端を解明します。
「科学と芸術」第11弾 「黄金比Φ」とは?第2回 2019年4月
「1と黄金比の逆数 1/Φ を加えると、黄金比(Φ)そのものになる」、
「1と黄金比を加えて(1+Φ)、平方根をとると、黄金比(Φ)そのものになる」
という「不思議」です。実はこういう数は黄金比しかありません。
それは黄金比を求める方程式そのものに秘密があるのですが…。
そのことを数式で見てみましょう。難しく思われるかもしれませんが、ぜひ味わってください。
無限に続く黄金比の「神秘的な性質」を感じられることでしょう。
次回は、正五角形などの図形との関連を探究したいと思います。
「科学と芸術」第10弾 「黄金比Φ」とは?第1回 2019年3月
「科学と芸術」第9弾 ピタゴラス数へのこだわり 2019年2月
ピタゴラス数へのこだわり
「科学と芸術」第8弾 ピタゴラス数について 2019年1月
今回は、第4回で取り上げた「ピタゴラスの定理」、第5回で取り上げた「フェルマーの最終定理」と関係が深い「ピタゴラス数」を取り上げました。「ピタゴラスの定理」を成り立たせる自然数の組を「ピタゴラス数」といい、「3,4,5」がもっとも有名です。この「ピタゴラス数」は無数にあります。「5,12,13」「7,24,25」「9,40,41」などです。一方、「8,15,17」「20,21,29」などはあまり知られていません。これをどうやって見つけていくかは、たいへん興味深い課題です。最近は数学の問題で、その年の年号の数に関する問題がよく出題されています。私は、今年の「2019」を含む「ピタゴラス数」の残りの2つの数は何か? という疑問を持ち、それを解明しました。さあ、どんな数が登場するのでしょうか?
ピタゴラス数について
「科学と芸術」第7弾 正十二面体でカレンダー作成 2018年12月
2018年も最後の月を迎えました。
今回は、やや趣向を変えて、「正十二面体カレンダーをつくろう!」です。正十二面体は、「オイラーの多面体定理」のところでも登場しましたが、すべての面が正五角形でできていて、しかも12も面がある立体です。その展開図をコンパスと定規で作図して、それを組み立てて正十二面体にする ー なかなかスリルがありますよ。まず正五角形を一つ作図するのですが、その対角線をどんどん引いていくと、いつのまにか正十二面体の半分、つまり六面の展開図になっている、というところが興味深いのです。「正十二面体の制作」は生徒に人気があり、すでに中学校の「超数学講座」では参加者全員が制作を楽しみ、最後に各面に2019年の各月のカレンダーを貼って完成しました。
正十二面体カレンダー作成
「科学と芸術」第6弾 フォイエルバッハ円 2018年10月
「超数学」シリーズも第6回となりました。
今回は、どの三角形にもある「九点円」の紹介です。どの三角形にも、五つの「心(しん)」があることは知っておられると思います。つまり、外心、内心、重心、垂心、そして傍心(ぼうしん)です。九点円は、三角形の中の九つの点を見事に通過しているだけでなく、五心のすべてと関わりを持っているのです。この円が発見された歴史は浅く、19世紀ドイツの数学者フォイエルバッハが発見し、その性質を調べ、定理を証明しました。そこで、彼の功績を称える意味で、九点円は「フォイエルバッハ円」とも呼ばれています。
フォイエルバッハ円
「科学と芸術」第5弾 フェルマーの最終定理 2018年9月
今回は、「ピタゴラスの定理」の2乗のところをn乗にした「フェルマーの最終定理」の解説です。
しかも「存在しない」ことの証明ですから、数学者にとっては難題でありました。
そして、様々な数学者の努力と証明の積み重ねがあり、350年間かかってやっと証明されました。
その歴史を1枚にまとめるのは大変でしたが、その中に日本人の2人の数学者の活躍が光っているところが嬉しいですね。
フェルマーの最終定理
「科学と芸術」第4弾 ピタゴラス(三平方)の定理 2018年7月
4~6月までオイラー関連の公式・方程式が続きましたが、7月は、前にも「最も美しい等式」の候補に上がっていた「三平方の定理」を取り上げました。
「直角三角形の斜辺の長さの二乗は、他の辺の長さの二乗の和に等しい」というきわめてシンプルな定理で、広く知られている定理です。
しかし、この定理がなければ図形の研究は進まなかったと言ってもよいほど、重要な定理です。また、図形や座標の問題を解いていると必ずどこかで登場する定理です。今回は、古代ギリシャの数学者ピタゴラスがこの定理をまとめた歴史的背景を探ってみました。
ピタゴラス(三平方)の定理
「科学と芸術」第3弾 オイラーの公式 2018年6月
6月に入って、「科学と芸術第3弾」=「オイラーの公式」が掲示されています。
この公式は、第2弾の「等式」のもとになったもので、今度は指数関数 e^x と三角関数である cosx,sinx が虚数 i を介して結ばれるというもので、数学の様々な分野や、電気工学・物理学などでも応用される「人類の秘宝」と評されている公式です。
偉大な数学者オイラーが3回連続したので、次回はどんな公式が登場するのか?ご期待ください。
人類の至宝=オイラーの公式
「科学と芸術」第2弾 世界で一番美しい等式 2018年5月
2018年度学校方針スローガン=「科学と芸術」の第1回掲示として、数学の「世界で2番目に美しい公式」=「オイラーの多面体定理」の紹介がされましたが、4月下旬には第2弾として、「世界で一番美しい等式」が掲示されました。
前回の掲示を見て、「2番目ということは、1番目があるはずです。1番目はどんな公式なのですか?」という質問が多くの生徒から出ました。
そこで今回の掲示となったのですが、「一番美しい等式」とされているものも、18世紀の数学者レオンハルト・オイラーが発見したものです。
eとiとπ という高校数学でも学習する、数学の超重要な「数」が組み合わさって、それに1を加えると何と0になってしまうという等式です。
オイラーが発表した当時はそれほどその価値が理解されませんでしたが、20世紀から21世紀にかけてこの等式の美しさと重要性が多方面で認識されるようになったものです。
次回は、この等式のもとになった「オイラーの公式」が紹介されるようで、数学好きな生徒以外からも注目を集めています。
世界で一番美しい等式
「科学と芸術」第1弾 オイラーの多面体定理 2018年4月
2018年度の学校方針のトップに掲げられたスローガンは「連携・交流・共汗」です。
これは昨年度を踏襲したものですが、今年度はそれに加えて副題として、「科学と芸術」が掲げられました。
知育の根幹となる科学、そして徳育の核となるのが芸術です。
この両者がバランスよく、本校の教育に貫かれ、人間力を養っていくことをねらいとしています。
まずは数学。「世界で2番目に美しい公式」=「オイラーの多面体定理」の紹介です。
オイラーの多面体定理